『テロリズムとは何か』 佐渡龍己
テロリズムについて、その歴史や兵法について詳しく解説されている本です。元陸上自衛隊調査学校教官の佐渡氏が、在スリランカ日本大使館勤務時にテロリズム問題に取り組まれていた経験を元に書かれています。(2000年発行)
■テロリズムとは?
terrorismという言葉を分解するとterror-ismとなり、terrorには恐怖で打ちのめすという意味がある。テロリズムは対象に恐怖を与えることによって自分たちの要求を認めさせるもである。
民衆の一部の人々が、政府の支配下において生活や信念を脅かされる状態に追い込まれ、その状態から脱却するために、社会の法や慣習、常識が役に立たないとき、社会のタブーを破った方法でその状況から脱出しようとする。これがテロリズムの背景となる。
■テロリズムのパターン
a)恐怖の原因となっているものを直接脅す
AがBによるある事項に非常な恐怖を抱いている場合、Bを直接脅し、Bにその事項を止めさせる。
例)在ケニア米国大使館と在タンザニア米国大使館爆破事件
1998年、イスラム聖地解放軍が、敵とする米国の政府施設を直接攻撃し、アラビア半島のイスラム聖教地からの米軍の追い出しを狙う。
b)民衆を利用する
AがBによるある事項に非常な恐怖を抱いている場合、民衆を脅し、民衆からの圧力によってBにその事項を止めさせる。
例)キプロス独立テロ
1960年、当時のキプロス島はイギリスの統治下に置かれていたが、島はかつてないほど経済的に発展し、民衆は幸福な生活を営んでいた。しかし、キプロス島のギリシャへの合併を目的とするキプロス戦士民族機構は、イギリス兵およびイギリス民間人を殺害し、イギリスの過剰報復を誘う。イギリスの報復は関係のない民衆を巻き込むこととなり、それによってイギリスは民衆からの支持を急速に失い、イギリスはキプロスの独立を認めることになる。
c)国際世論を利用する
AがBによるある事項に非常な恐怖を抱いている場合、Bを脅すことによってBに過剰報復を誘発させる。Bの過剰報復の惨状を国際世論に訴へ、国際世論からの圧力によってBにその事項を止めさせる。
例)イスラエル独立テロ
1945年、当時のパレスチナはイギリスの統治下にあったが、イギリスはユダヤ人移民を拒否する。ユダヤ人によって組織されたイグルーンは、イギリス兵やイギリス民間人を殺害し、イギリスの過剰報復を誘う。イギリスの過剰報復は国内外の世論に訴えられ、それは世論の反発を招き、イギリスはパレスチナに駐在し続けることは難しいと理解するようになる。1948年、イギリスはパレスチナから撤退し、イスラエルは独立宣言する。
d)第三国を利用する
AがBによるある事項に非常な恐怖を抱いている場合、第三国の人間を人質にとり、第三国からの圧力によってBにその事項を止めさせる。
例)在ペルー日本大使公邸占拠事件
1996年、トゥパク・アマル革命運動は、日本をフジモリ政権を支援しているとみて日本大使公邸を占拠する。日本政府を脅し、日本政府からの圧力によってペルー政府に彼らの要求を受け入れさせようとしたが、ペルー軍によって鎮圧される。
e)民衆を殺害するように工作する
AがBによるある事項に非常な恐怖を抱いている場合、まずAがBを攻撃し、Bの過剰報復を誘発させる。続いてBの過剰報復によって民衆が死傷するように工作する。この結果を国際世論に訴え、国際世論からの圧力をもってBにその事項を止めさせる。
例)ベトナム戦争
1960年に結成された南ベトナム開放戦線は、南ベトナム軍やアメリカ軍に対し、ゲリラ戦を展開する。手順としてまず村の入り口周辺に各種の罠を設置する。その後、南ベトナム軍やアメリカ軍の兵士に発砲して村に逃げ込む。ゲリラ兵を追ってきた南ベトナム軍部隊、アメリカ軍部隊は村の入り口で罠にかかる。罠にかかった彼らはパニックに陥り、村人を攻撃することになる。こうしてできた村の凄惨な状態を国際世論に訴えることによって、南ベトナム、アメリカに圧力を加える。
無関係な人を巻き込んで、人の善意を利用して自分たちの目的を達成させようとするのは、目的のためには手段を選ばないといったところでしょうか。恐ろしい話です。日本は治安が良いので、こういったことには無縁かと思えるのですが、日本人によって組織された日本赤軍が世界中でテロを起こしていたり、在ペルー日本大使公邸占拠事件やオウム真理教による地下鉄サリン事件、テロ支援国家北朝鮮の日本人拉致事件など、決して無縁の話じゃありません。テロに巻き込まれることを回避するためにも、テロに対する正確な知識を持つ必要があると思います。
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