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2008年7月 2日 (水)

『風の谷のナウシカ』 宮崎駿

Kazenotaninonausica1  宮崎駿監督が12年の歳月をかけて完成させた漫画です。『風の谷のナウシカ』といば1984年に公開された映画が有名ですが、映画は宮崎監督が1982年から連載を開始した漫画の1巻から2巻半ばあたりまでが元になっています。映画は人間と自然の共生を訴えた内容でしたが、漫画は人間の業に焦点を当てた深く複雑な内容になっています。(1982年~1994年連載)

■ストーリー
 遥か未来、人類の文明が絶頂を迎えた時代に火の七日間と呼ばれる世界を巻き込む戦争が発生。文明は崩壊し、世界の大部分が腐海と呼ばれる菌類の森に覆われる。人類は瘴気に覆われ獰猛な蟲が闊歩する腐海を避け、人類が生息可能な土地にエフタルと呼ばれる高度な文明を持つ国を造るも、王位継承を巡る争いや大海嘯と呼ばれる蟲の侵食によってエフタルは滅びることになる。それから約三百年後、火の七日間から数えて約千年後の世界では、腐海はさらに範囲を広げ残された僅かな土地ではトルメキア王国と土鬼諸侯連合の二大国が対峙する。
 腐海のほとりにあるエフタルを祖とする辺境諸国の一つである風の谷の近隣に一機の輸送機が墜落する。風の谷の族長の娘であるナウシカは、輸送機の残骸のなかで奇跡的に生きていた少女を発見する。その少女は同じ辺境諸国ペジテの王族で、彼女はナウシカに奇妙な石のようなものを託して息を引き取る。その石によってナウシカは人間の途方もない意識の流れに飲み込まれていくことになる。

Nausica2_2■ナウシカとクシャナの物語
 この物語には二人の主人公がいます。一人は風の谷の族長の娘ナウシカ、もう一人はトルメキア王国第四皇女クシャナです。この二人は生き方は違えど国を治める一族の姫であり、聡明でかつ指導力、行動力、決断力、人望を持ち合わわせると共に、激しい攻撃性を秘めている所など、共通する部分が多いです。

私達は血を吐きつつ、繰り返し繰り返しその朝を越えてとぶ鳥だ!!

 腐海や蟲、人間といったこの世界の自然の代弁者のように描かれるナウシカ。彼女は父親である風の谷の族長の愛情や彼女を慕う風の谷の民達のなかで、強さと優しさ、賢さを兼ね備えた女性に育ちます。彼女はペジテの王族から石を託されたことを切欠に、火の七日間が起きた理由、腐海や蟲が存在する理由、それらにおびえながらも人間が生きていくことができる理由などの物語の核心に迫っていきます。

王位にしがみつく老いた醜い化け物め
それほど執着する王位なら
血まみれのわが手でひきむしってやる

   ナウシカと対照的に描かれるクシャナ。彼女は人間の欲望や情念といったものを代弁するように描かれています。彼女は大国トルメキア王国の皇女として生まれるも、王位継承を巡る争が繰り広げられる王室で常に周囲を敵意で囲まれて育ちます。クシャナがまだ少女のときに、彼女を狙った暗殺の身代わりとなって母親が毒を飲み、精神に障害を持ってしまったことが、後の彼女の人格形成に大きく影響することとなります。天才的な戦略眼とトルメキア軍随一の人望を兼ね備えた彼女は、辺境諸国への進軍を命じられたことを機に王家に反旗を翻します。その足がかりとして、ナウシカがペジテの王族に託された石を捜索するために風の谷に進軍し、そこでナウシカに出会ったことを切欠に物語に深く関わっていくことになります。

Nausica3 ■徹底した戦闘描写
 漫画でも、冒険活劇の面もあった映画のように空中戦や地上戦の描写がありますが、それは徹底してます。例を挙げれば、ガンシップが輸送機を爆破すればばらばらになった乗組員達の体の一部やまだ生きている乗組員達が空中に撒き散らされ、騎兵の一群が敵中突破すれば敵兵は文字通り蹴散らされ、砲弾が着弾すれば人体は四散し、蟲の大群が人が集まっているところを襲えばそこはバラバラになった人体が撒き散らされる地獄絵図と仮し、前線の要塞には戦火や蟲によって家を失った難民が溢れかえります。

 漫画版は映画版のように人間は腐海や蟲といった自然と共存していくべきといった内容ではありません。人間の業そのものに焦点を当てた内容です。蟲におびえながらも少ない土地をめぐって争う人々の情念、火の七日間が起きた理由、腐海や蟲の生まれた理由、どれも人間の業に起因するもので深く考えさせられます。なかでも特に物語最後にナウシカが下した決断、ありのままの人間を受け入れ、人間の理性が多くの血を流して積み上げてきたものを否定する決断は正しかったのか。
 沢山いる登場人物のなかでも好きだったのがクシャナの参謀のクロトワ。一見飄々としていながら、魑魅魍魎が闊歩するトルメキア王室やトルメキア軍という巨大な組織のなかで状況を打開していくしたたかさに、確かな軍事的才能と冷静な判断力を持ち合わせた徹底的な現実主義者。彼とクシャナは本当に良いコンビだと思います。物語最後に彼が言った短い台詞は彼の性格が良く出ていてよかったです。
 もしかなうなら、漫画版に沿った映画を三部作ぐらいで創ってもらいたいものです。そうしたら絶対に観にいくのにな。

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コメント

tkcさん、こんにちは♪
漫画版があったのですね。
映画はそれなりに面白いとは思ったのですが、世間で騒がれるほど入り込めなかった・・・
イマイチ背景が解りにくいし、ナウシカのキャラもピンとこなかった・・・
この漫画を読めばスッキリしそうですね。
私も漫画に忠実な映画を期待したいです ヘ(^.^)/

投稿: あばた | 2008年7月 3日 (木) 20時39分

>>あばたさん
映画は2時間にまとめなければならないので、どうしても説明不足になったりしますよね。
漫画をはじめて読んだときは、映画との内容の違いに(良い意味で)驚きました。
漫画に忠実な映画、本当に観たいです。
ただ、漫画に忠実な映画を創ったとしたら、今までのジブリのイメージが崩れるかも。
複雑で入り組んだ内容に戦争映画顔負けの残虐描写。
とても家族連れで楽しめるものじゃないcoldsweats01

投稿: tkc | 2008年7月 4日 (金) 20時59分

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