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2008年6月17日 (火)

『ホワイトアウト』 真保裕一

Whiteout  日本最大のダム、奥只見ダムをモデルにした架空の巨大ダムを占拠したテロリストを相手に、孤軍奮闘するダム運転員の活躍を書いた小説です。「ホワイトアウト」とは、雪や雲などがガス状に立ちこめて視界が真っ白になり空間と地面の区別がつかなくなる現象のことです。(1995年発行)

■ストーリー
 奥遠和ダムは新潟県と福島県の間にあり周囲を2000m級の山々に囲まれた日本最大の貯水量をほこるダム。互いに友人として認める富樫輝夫と吉岡和志はダム運転員として奥遠和ダムに勤めるかたわら、会社の山岳部で登山を趣味としている。11月も半ばのある日、富樫と吉岡はダム近辺で遭難した登山者の救助にむかう。富樫と吉岡は遭難者を発見したものの、帰路で吉岡が足を負傷してしまう。富樫は吉岡と遭難者をその場に置き応援を呼びに行くが、その途中でホワイトアウトに遭遇し、その場でのビバーグを余儀なくされる。翌日、ダムにたどり着いた富樫の報告を受けて救助隊が向かうが、遭難者は生存していたものの、吉岡は死亡していた。
 それから約二ヶ月後、吉岡の恋人であった平川千晶は、元恋人の職場、奥遠和ダムを訪れるが、その時にダムはテロリスト「赤い月」に占拠され、千晶はダム職員と共に人質にされる。ダムを占拠した「赤い月」は政府に50億円を要求する。偶然にもテロリストによる拘束を免れた富樫は、外部との連絡が遮断されたなかで一人、テロリストへの抵抗を始める。

■戦う相手はテロリストと雪山
 小説の始めにテロリストにダムが占拠されてから小説の最後まで、富樫とテロリストとの攻防が繰り広げられます。

吉岡。頼むから力を貸してくれ。

 一介のダム運転員でしかない富樫が持つものは、ダムに関する知識と豊富な登山経験、そして二ヶ月前に吉岡を結果的に死なせてしまったことへの悔恨。富樫はこれらを元にテロリストへの抵抗を続けます。富樫が状況を打開するために一つ手を打てば、テロリストがそれを潰し、新たな手を打てばまた潰し、さらに新たな手を打つ、この展開は疾走感にあふれます。
 そして、もう一つの敵といえるのが厳冬期の雪山です。体力を奪い続ける氷点下の気温、雪のなかに腰まで埋まり1km進むのに何時間もかかる雪山、押し寄せる雪崩、痛みを感じるほどの雪の冷たさ、凍傷の恐怖、そして吉岡が死んだときと同じようなホワイトアウト、テロリストに加えてこれらが富樫の行く手を阻みます。

 話の展開もそうですが、文章そのものに疾走感があって読んでいると自然と引き込まれます。それに加えて、舞台となるダムや雪山の描写が緻密に書かれていることも読み手を話に引き込むことに一役買っています。他の建造物に比べて特殊なダムの構造やダムに併設された発電機、送電システムを絡めた話の展開はよくできています。富樫を苦しめる雪山の描写については読んでいると寒さを感じるほどでした。最初から最後まで一気に読めて楽しめる小説です。

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コメント

tkcさん、こんにちは♪
この方の山のお話には惹き付けられるものがありますね。
あと、どんなお話にも共通してる緻密な内容。毎回、感心させられます。

自責の念ってのもあるのでしょうが、山で培った男の友情ってスゴイものがあるのかもって思ってしまいました。女には有り得ないなって。
読み終わって「富樫が可愛そう~(ρ_;)」って。
リアルに描こうとするとそうなってしまうんでしょうが、ラストは元気に雪山に戻る富樫が見たかったです。そこだけが不満(-。-;)

投稿: あばた | 2008年6月19日 (木) 20時47分

>>あばたさん
>自責の念ってのもあるのでしょうが、山で培った男の友情ってスゴイものがあるのかもって思ってしまいました。女には有り得ないなって。
女ではありえませんか。
この小説のような友情は男でもそうあるとは思えないんですが、共感はします。なんというか熱いです。
>読み終わって「富樫が可愛そう~(ρ_;)」って。
>リアルに描こうとするとそうなってしまうんでしょうが、ラストは元気に雪山に戻る富樫が見たかったです。そこだけが不満(-。-;)
小説の最後、富樫は体に障害は残りましたが、自分の過去を乗り越えることができたし、千晶とも和解できそうで、私はハッピーエンドじゃないのかなと思います。

投稿: tkc | 2008年6月20日 (金) 18時19分

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